はじめに・第1回:本コラムについて

はじめに

ベクトル制御は1970年前後、誘導モータのトルク伝達関数を定式化し、
直流モータと同様なトルク制御を実現することを目的としてドイツで誕生しました。
その後、パワーエレクトロニクス、マイクロプロセッサの発展により本格的に実用化され、
1990年代からは永久磁石同期モータへの適用が拡大しました。
近年では、小型軽量化・高効率化が可能な永久磁石同期モータを用いた
ベクトル制御技術が様々な製品に適用されています。
電気自動車の普及や電動パーソナルモビリティの開発も進む中で、
これからモータの制御を勉強したいと考えている技術者の方や学生の方は少なくないかと思います。

弊社ではこのような方々の一助になればと考え、「クラウドモーターシミュレーター β版」を公開しています。
ここでは、永久磁石同期電動機のベクトル制御を理解するうえで欠かせない
モータの数式モデルの導出方法や、電流制御系の設計方法について説明します。

 

本コラムで使用する変数または定数の定義について

使用する変数および定数の定義を以下に示します。

\(v_u{,}v_v{,}v_w\) : u相電圧、v相電圧、w相電圧
\(v_d{,}v_q\) : d軸電圧、q軸電圧
\(i_u{,}i_v{,}i_w\) : u相電流、v相電流、w相電流
\(i_d{,}i_q\) : d軸電流、q軸電流
\(V_a\) : 電圧振幅
\(V_0\) : 誘起電圧振幅
\(I_a\) : 電流振幅
\(R\):固定子巻線抵抗
\(L_u{,}L_v{,}L_w\) : u相自己インダクタンス、v相自己インダクタンス、w相自己インダクタンス
\(M_{uv} = M_{vu}\) : u-v間相互インダクタンス
\(M_{vw} = M_{wv}\) : v-w間相互インダクタンス
\(M_{wu} = M_{uw}\) : w-u間相互インダクタンス
\(L_d{,}L_q\) : d軸インダクタンス、q軸インダクタンス
\(\psi\) : 永久磁石鎖交磁束
\(P_f\) : 極対数
\(\theta_{re}\) : u相を基準とした回転子の磁極位置(電気角)
\(\theta_{rm}\) : u相を基準とした回転子の磁極位置(機械角)
\(\omega_{re}\) : 回転子速度
\(\omega_{rm}\) : 回転子速度
\(T\) : 出力トルク
\(T_L\) : 負荷トルク
\(p\) : 微分演算子