補足4:ワインドアップ現象時とアンチワインドアップ制御時のPI制御器出力の違いについて

ワインドアップ現象時の操作量

 図1にワインドアップ現象時の操作量を示します。①から②の区間では、モータ速度が指令値よりも小さいため速度偏差は正の値となります。ステップ指令を与えた瞬間に速度偏差に応じてPI制御器出力(トルク指令)が増加し、時間の経過とともにモータ速度が徐々に増加していきます。なお、「第9回:ワインドアップ現象とその対策」でも述べたように、ステップ速度指令が入力されると、PI制御器はステップ状のモータ速度応答を実現するためにインパルス状のトルクを出力しようとしますが、リミッタによって出力トルクが制限されるため、実際には図1の①から②の区間のようなランプ状の速度応答となります。モータが加速すると速度偏差減少にともなって比例操作量は減少します。一方、積分操作量は偏差を積分するため、速度偏差が正の値である間は増加し続けます。この結果、偏差が減少してもPI制御器出力は増加し続け、リミッタ以上の値となります。

 時間が経過し②に至ると、モータ速度は指令速度と等しくなります。この時、比例操作量は0になります。②から③の区間では、実速度が指令値よりも大きくなるため、速度偏差は負の値となります。このため、比例操作量も負の値となります。一方、積分器にはモータ速度が速度指令値に達するまで積分された偏差が蓄積されているため、積分操作量は偏差の大きさに応じて徐々に減少していきますが、値は正のままです。結果的にPI制御器の出力はリミット値を超える正の値となり、速度が指令値を超えているのにも関わらずモータは一定加速度で加速し続けます。

 さらに時間が経過し③に至ると、PI制御器の出力はゼロとなります。その後、出力が負となった時点からモータが減速し始めます。③から④の区間では、速度偏差の正負や比例操作量と積分操作量の初期値は異なりますが、①から②の区間と同様の動作となります。減速時も速度が指令値に達するまでに積分器に制限値を超える過大な値が蓄積され、結果として➄のようなアンダーシュートが発生します。過大なオーバーシュートやアンダーシュートを抑制するためには、積分操作量を常に制限値以下に抑えることが重要となります。

図1 ワインドアップ現象時の操作量

   

アンチワインドアップ制御時の操作量

図2にアンチワインドアップ制御時の操作量を示します。リミッタ前後の差分を積分偏差にフィードバックしているため、積分操作量がリミット値以下になっていることが分かります。結果として、速度が指令値に達した後のオーバーシュートを抑制できます。

図2 アンチワインドアップ制御時の操作量