第2回:SRモータ駆動システムの構築

 前回はSRモータの設計と試作について紹介しました。今回はSRモータの駆動方法について紹介します。

SRモータの駆動システム

 図2.1にSRモータの駆動システムの構成を示します。SRモータを駆動する回路は非対称Hブリッジ回路です。非対称Hブリッジ回路はPMモータや誘導モータを駆動するインバータとは異なります。ただし、SRモータは非対称Hブリッジ回路ではなくても、Hブリッジ回路や三相インバータで同じような回路を構成することで駆動できます。SRモータを制御するためには、モータに流れる電流と回転子位置を検出する必要があります。そのため、電流センサと位置センサ(エンコーダやレゾルバなど)を取り付けます。これらの検出値は制御回路に入力されます。制御回路ではSRモータを駆動するために必要なスイッチング信号を生成します。



図2.1 SRモータ駆動システムの構成

 図2.2にSRモータの制御回路の中身を示します。制御回路は主にマイコンとFPGAで構成します。SRモータの制御では回転子位置(電気角)に対応したパルス電流を通電する必要があるため、FPGAを使います。FPGAでは検出した電流と回転子位置をもとにスイッチング信号を生成します。SRモータの駆動制御ではヒステリシス電流制御が一般的です。


図3.2 SRモータ制御回路の構成

ヒステリシス電流制御

 図2.3にSRモータに通電する電流波形のイメージを示します。本来、SRモータに流したい電流は(a)のように通電期間中に任意の電流値となるパルス電流ですが、これは実現できません。インダクタンスにより電流の立ち上がりと立ち下がりが遅れるため、非対称Hブリッジ回路では一定の電流を流しつづけられないためです。そのため、パルス電流に近い(b)の電流を流します。その方法がヒステリシス電流制御です。

 ヒステリシス電流制御によりパルス電流を生成するには、指令値として電流値、スイッチオン角、スイッチオフ角のほかに電流しきい値を与えます。非対称Hブリッジ回路ができる動作は、
 ①スイッチをオンにして正の電源電圧を印加する(電流を増加させる)
 ②還流ダイオードを利用して負の電源電圧を印加する(電流を急激に減少させる)
 ③スイッチとダイオードを利用して電流をコイルで循環させる(電流を緩やかに減少させる)
の3通りだけです。したがって、実電流は立ち上がりと立ち下がりの期間を除く一定値期間も指令値にぴったり追従させることは不可能です。そのため、(b)のように指令値からある範囲で追従させるべく、①~③の動作をさせることになります。この範囲を決めるのがしきい値です。しきい値を小さくすればモータに流れる電流は指令値に近づきますが、高速でスイッチングさせる必要があります。スイッチングの限界速度は使用する半導体素子の性能によりますので、電源電圧、モータのインダクタンスも考慮して、適切にしきい値を決定します。

(a) 理想
(b) 現実

図2.3 SRモータに通電する電流波形

 図2.4にヒステリシス電流制御を利用した際の電流と電圧を示します。(a)はモータ回転が低速のときです。低速のときは誘起電圧が小さいので、巻線にかかる電圧は大きくなります。そのため、スイッチングにより、ほぼパルス状の電流を流すことができます。このような電流波形で駆動することをパルス電流駆動と呼びます。一方、(b)はモータ回転が高速のときです。高速のときは誘起電圧が大きいので、巻線にかかる電圧は小さくなります。そのため、モータに電源電圧を印加しても電流の立ち上がりが遅くなり、なかなか指令値に到達しなくなります。また、正の電源電圧を印加しているにもかかわらず、誘起電圧が増大すると、巻線にかかる電圧が負になることがあります。この場合、電流は減少に転じます。このように高速時は通電期間中、正の電源電圧を印加しつづける駆動となるため、パルス電圧駆動と呼びます。

(a) 低速時
(b) 高速時

図2.4 ヒステリシス電流制御を利用した際の電流と印加電圧

 図2.5に実際の電流波形を示します。低速時はパルス電流駆動、高速時はパルス電圧駆動による電流となっています。


(a) 低速時

(b) 高速時

図2.5 SRモータの実際の電流波形