第3回:SRモータの評価

 今回はSRモータの評価について紹介します。また、評価結果からモータ性能を改善するための考察を行います。

SRモータのインダクタンス

 図3.1にインダクタンス分布の解析値と測定値を示します。SRモータでは回転子位置によって磁気回路が変わるため、インダクタンスも変わります。回転子ティースと固定子ティースが対向する状態では磁気抵抗が小さくなるためインダクタンスは大きくなります。一方、回転子ティースと固定子スロットが対向する状態(ティース同士が対向しない非対向状態)では磁気抵抗が大きくなるため、インダクタンスは小さくなります。なお、対向状態のインダクタンスは解析値と測定値でよく一致していますが、非対向状態のインダクタンスは解析値と測定値に若干違いがあります。これは、解析モデル(第1回参照)が2次元なので、軸方向に発生する漏れ磁束を考慮できていないことが原因と考えられます。対向状態に比べて、非対向状態では磁束の大きさが小さくなりますので、相対的にこのような漏れ磁束の影響が強く現れます。

 図3.2に電流と鎖交磁束の関係を示します。SRモータの場合、対向状態の鎖交磁束と非対向状態の鎖交磁束の差が大きいほどトルクを大きくすることができます。そのため、電流と鎖交磁束の関係はSRモータの特性を表す重要な指標となります。非対向状態では磁気抵抗が大きく、磁気飽和になりにくいため、電流に対する鎖交磁束の傾きすなわち非対向インダクタンスは一定になります。一方、対向状態では、電流が大きくなるにつれ、磁気飽和が生じるため、対向インダクタンスは電流によって変化します。

図3.1 回転子位置(電気角)とインダクタンスの関係
図3.2 電流と鎖交磁束の関係

SRモータの出力特性

 つづいて、SRモータの出力特性を測定します。ここでは出力特性を回転数、トルク、効率、損失の関係という意味で使います。

 図3.3に出力特性測定時の装置接続図を示します。非対称Hブリッジ回路とSRモータの間の電圧、電流をパワーアナライザで取得します。これによりモータ入力電力を測定できます。また、SRモータの出力にトルクセンサを接続し、トルクを取得します。トルクセンサによっては回転数も合わせて計測できるものもあります。SRモータに負荷をかけるため、発電機(負荷モータ)を接続します。なお、今回の評価ではSRモータを電流制御により駆動しますので、発電機は速度制御することで定速度負荷とします。もし、SRモータを速度制御により駆動する場合は、発電機は電流制御またはトルク制御を行う必要があります。


図3.3 効率評価時の装置接続図

 モータの損失は銅損鉄損機械損に分けられます。このうち、銅損は計算で求めることができ、機械損は測定することができます。少し厄介なのが鉄損です。鉄損は直接測定することができません。そのため、全損失から銅損と機械損を引いた残りを鉄損とします。
(よく、鉄損の解析値と測定値が一致しないと言われますが、残り物の損失をすべて鉄損として扱うことも原因の一つです。銅損も正確にはコイルに流れる渦電流損(交流銅損)まで考慮しなければいけませんが、単純な計算式や測定で求められるものではありません。また、モータのケースが金属であれば、ここにも渦電流が流れることがあります。つまり、コア以外に発生する渦電流損もひとまとめに鉄損として扱うと合わなくて当たり前なのです。)

 図3.4に機械損の測定結果を示します。機械損は軸受(ベアリング)で発生する摩擦損とロータが回転することで受ける空気抵抗によって発生する風損をひとまとめにしたものです。摩擦損と風損のいずれも高速回転するほど大きくなります。なお、摩擦損は軸受の温度で変わるため、必要に応じた測定を行います。


図3.4 機械損の測定結果

 図3.5にSRモータの出力特性測定結果をを示します。効率は最大で80.4%でした。750Wのモータなのでまずまずといったところですが、改善の余地は大いにあります。銅損は導線の断面積を増やすか電流波形を見直すこと(トルク発生に寄与しないタイミングで通電していないか)で低減できます。鉄損は板厚の薄い低鉄損材料(今回は板厚0.35mmのものを使用)にすることで低減できます。

(a) 効率
(b) 電流実効値
(c) 銅損
(d) 鉄損

図3.5 SRモータの特性測定結果