第3回:電磁界解析による初期設計結果の評価

電磁界解析の併用

 第2回まででMotor Sketcherにより初期設計結果が得られることを説明しました。しかし、初期設計の段階では、詳細仕様として与える「トルクの平均値と最大値の比」が仮決めされた値なので、仕様通りの特性が得られていない可能性があります。そこで有限要素法による電磁界解析を行い、設計結果の妥当性を評価します。弊社では解析ソフトウェアとしてJMAG Designer(株式会社JSOL)を使用しています。今回はJMAG Designerを使って解析結果を確認します。
 図3.1に解析モデルを示します。今回はステータスロット数12、ロータスロット数8なので90度の反周期モデルとすることができます。このモデルを使って基底速度における最大出力動作点(動作点A)と最大速度における最大出力動作点(動作点B)のトルクを解析します。



図3.1 解析モデル(JMAG Designer)

動作点Aのトルク解析

 SRモータの解析で重要なポイントは電流目標値(制限値)の設定と通電開始角と通電終了角の設定です。これらは設計の際に得られたり、前提として決めていたりするので、それにしたがって設定することにします。電流目標値はMotor Sketcherによる計算結果がそのまま使えますので、今回は36.7A(第2回参照)とします。また、通電開始角と通電終了角ですが、駆動方式で考え方が変わります。動作点Aではパルス電流駆動(1相通電方式)を想定していますので、通電終了角は別の相の通電開始角(現在U相に通電しているとすれば、V相が通電開始する角度)に合わせます。
 通電開始角の決め方が少々ややこしいので注意です。SRモータではインダクタンスが増加する期間中に電流が流れていることで正のトルクが発生します。インダクタンスが増加し始めるのはステータ突極とロータ突極が対向し始める角度\(\theta_j\)です(図3.2)。したがって、十分なトルクを出力するには角度\(\theta_j\)の時点で電流が目標値に達しているようにします。そうすると、通電開始角は\(\theta_j\)の手前にする必要があります。



図3.2 通電開始角の考え方

 図3.3に動作点Aにおけるトルク波形を示します。平均値は2.75Nmです。仕様では2.39Nmとしていますので、15%程度大きいです。仕様以上のトルクが出力できるからOKとも考えられますが、小型化の余地があるといえます。



図3.3 動作点Aのトルク波形

動作点Bのトルク解析

 動作点Bのトルクもここまでと同様にして解析します。電流目標値はMotor Sketcherによる計算結果の26.9A(第2回参照)とします。また、動作点Bは高速域ということでシングルパルス電圧駆動を想定しています。通電開始角は動作点Aと同じ考え方で決めます。通電終了角はステータ突極の3分の2がロータ突極と対向するときとします(図3.4)。



図3.4 動作点Bの通電終了角の考え方

 図3.5に動作点Bにおけるトルク波形を示します。仕様では1.43Nmとしていますが、解析結果のトルク平均値は1.13Nmです。解析結果は仕様の8割以下ですので再設計を行います。



図3.5 動作点Bのトルク波形