補足3:状態方程式と伝達関数


 「第5回:永久磁石同期電動機のブロック線図と非干渉制御」に示した「図5.1 永久磁石同期電動機のブロック線図」を理解するためには、状態方程式と伝達関数の関係を知っておく必要があります。ここでは、状態方程式と伝達関数の関係について述べます。

状態方程式と状態変数線図

 「第3回:d-q座標数式モデルの導出」で求めた状態方程式を以下の式に置き換えます。
$$
\begin{align}
\large \frac{d}{dt}i_{dq} &=\large Ai_{dq}+Bv_{dq}-Be_{dq} \label{状態方程式}\\
\large i_{dq} &= \large Ci_{dq} \nonumber \\
\end{align}
$$
ここで、各行列は以下のとおりです。
$$
\begin{align}
\large A &= \large \left[ \begin{matrix}
-\frac{R}{{{L}_{d}}} & {{\omega }_{re}}\frac{{{L}_{q}}}{{{L}_{d}}} \\
-{{\omega }_{re}}\frac{{{L}_{d}}}{{{L}_{q}}} & -\frac{R}{{{L}_{q}}} \\
\end{matrix} \right] \tag{\ref{状態方程式}-a}\\
\large B &= \large \left[ \begin{matrix}
\frac{1}{L_d} & 0 \\
0 & \frac{1}{L_q} \\
\end{matrix} \right] \tag{\ref{状態方程式}-b}\\
\large e_{dq} &= \large \left[ \begin{matrix}
0 \\
{{\omega }_{re}}\psi \\
\end{matrix} \right] \tag{\ref{状態方程式}-c}\\
\large C &= \large \left[ \begin{matrix}
1 & 1 \\
\end{matrix} \right] \tag{\ref{状態方程式}-d}\\
\end{align}
$$
 (\ref{状態方程式})式の\(i\)を出力、\(v\)を入力として状態変数線図を書くと以下のようになります。ここで、微分値\(\frac{d}{dt}i\)を積分器に入力することで出力\(i\)を得ます。図で表すことで、入力と出力の関係がわかりやすくなります。

図1 状態変数線図

 図1はセンサレスベクトル制御に必要なオブザーバを構成するためにも重要な役割をします。例えば、電流誤差から誘起電圧を推定するような制御では、制御器内に図1を構成し電流を推定します。また、磁束オブザーバや拡張誘起電圧オブザーバも出力を磁束や拡張誘起電圧とすれば同様の手順で求めることができます。センサレスベクトル制御に関しては、今後クラウドシミュレータに実装し、コラムでも紹介する予定です。

 

ラプラス変換域での状態方程式と伝達関数の関係

 状態変数ベクトルのラプラス変換を以下の式のように置きます。
$$
\begin{align}
\large X(s) &= \large \mathcal{L}[x(t)] \label{ラプラス変換1}\\
\large \mathcal{L} \left[\frac{d}{dt}x(t)\right] &= \large sX(s) – x(0) \label{ラプラス変換2}\\
\end{align}
$$
ただし、\(x(0)\)は初期値です。(\ref{ラプラス変換1})、(\ref{ラプラス変換2})式を用いて、(\ref{状態方程式})式の両辺をラプラス変換すると以下の式となります。
$$
\begin{align}
\large sI_{dq}(s) – i(0) &= \large AI_{dq}(s) + BV_{dq} – BE_{dq} \label{ラプラス変換した状態方程式}\\
\large I_{dq}(s) &= \large CI_{dq}(s) \nonumber \\
\end{align}
$$ 
ここで、\(E = 0\)とおき、(\ref{ラプラス変換した状態方程式})式をI(s)について解くと以下の式となります。
$$
\begin{align}
\large I_{dq}(s) &= \large (sI-A)^{-1} i_{dq}(0) + (sI-A)^{-1} BV_{dq}(s) \label{Isについて解いたラプラス変換した状態方程式1} \tag{\ref{ラプラス変換した状態方程式}-a}\\
\large I_{dq}(s) &= \large C(sI-A)^{-1} i_{dq}(0) + C(sI-A)^{-1} BV_{dq}(s) \label{Isについて解いたラプラス変換した状態方程式2} \tag{\ref{ラプラス変換した状態方程式}-b}\\
\end{align}
$$
伝達関数はシステムの内部の初期値をゼロとおいた時の入出力の比なので、(\ref{Isについて解いたラプラス変換した状態方程式2})式で初期値\(x(0) = 0\)とおけば、ラプラス変換域での状態方程式と伝達関数の関係を以下の式で表せます。
$$
\begin{equation}
\large G(s) = \frac{I_{dq}(s)}{V_{dq}(s)} = C(sI-A)^{-1}B \\
\end{equation}
$$