第5回:永久磁石同期電動機のブロック線図と非干渉制御

ブロック線図

 図5.1に永久磁石同期電動機のブロック線図を示します。伝達関数は、状態方程式をラプラス変換することによって導出することができます。また、電流からトルクは「第4回:永久磁石同期電動機の電力とトルク」で求めた式を用い、トルクを慣性モーメントで割って積分することで回転機械角速度を求めることができます。ただし、ここではモータの粘性摩擦係数は無視できると考えます。

図5.1 永久磁石同期電動機のブロック線図

 図5.1を見ると、d-q軸間で干渉し合う速度起電力があることがわかります。もし、この速度起電力を零とすることができれば電圧から電流までの伝達関数が単なるRL負荷の伝達関数と一致します。制御対象であるモータをRL負荷と同じ伝達関数とみなすことができれば、電流制御系の設計が簡単になります。しかし、この速度起電力を直接制御することはできません。そこで、既知のモータパラメータや検出可能な電流などをもとに、あらかじめこの速度起電力を計算し、制御器側で速度起電力の影響を打ち消す方法があります。このような制御を非干渉制御と呼びます。

非干渉制御

 図5.2に非干渉制御を追加したブロック線図を示します。非干渉制御を行うことでモータの電圧から電流までの伝達関数はRL負荷と等しくなります。

(a)非干渉制御追加

(b)等価的なブロック線図
図5.2 非干渉制御を追加したブロック線図
非干渉制御の効果

 非干渉制御の効果はクラウドシミュレータで確認することができます。シミュレータトップページの「コントローラ」ボタンを選択し、「非干渉化制御設定」にて設定できます。設定を「有効」としたときと「無効」としたときで電流応答を確認するとその違いが確認できます。「無効」の場合は、たとえばd軸電流指令がゼロまたは一定の場合でもq軸電流指令が変化したときにd軸電流が変化してしまいます。一方、「有効」の場合は、d軸電流指令がゼロであればq軸電流指令によらずゼロのままです。このように非干渉制御をすることで、d-q軸間で干渉し合う速度起電力の影響を抑えることができます。なお、図5.3でq軸電流指令値の変化にともなってd軸電流指令値が変化しているのは、「MTPA制御設定」を有効としているためです。MTPA制御に関しては後ほどコラムにて説明いたします。

図5.3 非干渉制御の効果(左図:非干渉制御設定無効、右図:非干渉制御設定有効)
非干渉制御の注意点

 図5.2に示した非干渉制御では、離散化の影響やパラメータ誤差の影響を考慮していません。そのため、モータの回転速度に対してインバータの制御周期が遅い場合や、モータパラメータ測定時の誤差が大きい場合は、非干渉制御の効果が小さくなってしまいます。この問題を解決するためには、特殊な非干渉制御が必要となります。パラメータ誤差が非干渉制御に及ぼす影響とその対策に関しては、弊社加藤の博士論文に詳しく記載してありますのでご覧ください。